深雪〜miyuki〜 第四話〜静名〜
腹ごしらえも終え、外に出た僕と深雪たん。
風のせいもあってか、外は入る前より寒く感じる。
手袋をしてないせいで手がめっちゃ冷たい、死ぬ。
それにしても深雪たんは大丈夫なんだろうか。
裏「あの…その格好、寒くありませんか?
ミニスカートにノースリーブ、誰がどう見ても寒い格好である。
…いや、確かに可愛いのは認めるよ。
それに深雪たん反則的に似合ってるしさ!
だがこれとそれとはまた別問題なのだ。
深雪「ちょっと寒いですけど…でも、慣れてますから
しかしそんな言葉とは裏腹に小さな体は小刻みに震え、白い息を漏らしている。
…やっぱり寒いんだろうな。
そう思った僕はジャケットを1枚脱ぎ、深雪たんに差し出した。
裏「これ、良かったら使ってください
深雪「え…でも…
裏「何だか寒そうですし…僕は大丈夫ですから
と、笑って見せる僕。
ごめん内心めちゃくちゃ寒いんだけどね!1
深雪「…有難う御座います
相変わらず恐縮そうな表情を浮かべつつ、ジャケットを受け取る深雪たん。
しかし流石に彼女には少し大きすぎた様で、傍目から見てもブカブカなのがよくわかる。
そんな姿が愛らしくてつい頭をなでたい衝動に駆られて来る。
裏「ちょっと大きすぎたですかね…
深雪「そうかもしれません…けど寒さはしのげますし、大丈夫です
そう言って微笑みかけてくれる深雪たん。
裏「そうですか、それなら良かったです
深雪「あの…有難う御座います
裏「いえいえ、気にしないでくださいよ
深雪「…はい。裏葉さん、優しいんですね
裏「あはは…
僕の中にどんな妄想を抱いてるかわからないけど、それは絶対確実に無いと思うよお嬢さん。
深雪「…なんだか
裏「はい?
深雪「……ほんとうに…すきになっちゃいそうです…
裏「…何が?
深雪「………
暫し沈黙する僕達。
吹き抜ける強い風が体を刺す様に突き抜けていく。
…寒い、寒すぎる。
静寂と寒さに耐えられなくなった僕は口を開いた。
裏「とりあえず今日はもう遅いですし…お開きにしましょうか
深雪「…そうですね
辺りも暗くなってきたし、こんな寒い中探し続けていても仕方ないだろう 。
僕達は今日は帰るという事で合意した。
裏「えと…深雪さん電車代とか大丈夫ですか?
深雪「あ、はい。お家、近いですから…
裏「へぇ、家どの辺りなんですか?
深雪「えと…此処からまっすぐ行ったあたりにあります…
この道をまっすぐ行くと丁度駅にたどり着く。
裏「そうなんですか、僕も通り道ですから途中まで着いていきますよ
深雪「え、でも…
裏「もうこんな時間ですし…、女の子が一人で歩いてたら危ないですよ
深雪たん、ただでさえ狙われやすそうな見た目してるしね。
…色んな層から狙われちゃうぜ!
深雪「……なんで
裏「ん?
深雪「…なんでそんなに気にかけてくれるんですか?私なんかを…
裏「え…いやその…
何でと言われても…、強いて言えば可愛いから?
そんな理由でわざわざ付き合っているんだろうか。
成り行き?成り行きで此処まで付き合う理由も無ければ義理も無い。
…よくわからない。
深雪「…裏葉さん
裏「は、はい?
深雪たんが何やら真剣な瞳で僕を見つめてくる。
身長差もあってか必然的に上目遣いで見つめられる僕。
…くそ、そんな目でみつめられたらどうにかなっちまうじゃねーか。
と、僕は思わず目をそむけてしまった。
深雪「……いいです、行きましょう
裏「は、はぁ…そうですね…
何が"いい"のかよくわからないがとりあえず返事を返す僕。
深雪たんが駅へと向かい、歩き出した。
つられて歩き出す僕。
続く静寂、冷たく重く突き刺さる風。
…何だか息苦しい、気まずい雰囲気。
道行く人がチラチラと僕達を見てくる。
喧嘩した恋人同士にでも映っているのだろうか。
恋人…恋人ね。
深雪たんが恋人だったら僕は今頃どれだけハッピーな人生が送れているんだろう。
―やがて僕らは駅へとついた。
長い静寂を断ち切る様に、僕は口を開いた。
裏「あの…
深雪「…なんですか?
裏「…いや、その…怒ってますよね?
深雪「別に…怒ってませんけど
いや、誰がどう見ても怒ってるんだろ…常識的に考えて…。
怒ってるってレベルじゃねーぞ!
裏「や…怒ってますよね?
深雪「…ばーか
…え。
いきなり何を言い出すんだろうこの子は。
裏「えっと…
深雪「…なーんて、えへへ。ちょっと困らせてみようと思っただけですよーだ
そう言って作り笑いを浮かべる深雪たん。
…本当にただそう思っていただけなんだろうか。
深雪「…あ、これ返しますね
深雪たんは着ていたジャケットを返してくれた。
僕は軽くお辞儀をしてそれを受け取る。
お、深雪たんの温かいぬくもりが…。
裏「有難う御座います。…ええっと寒くないですか?
深雪「私は大丈夫ですから、気にしないでください
裏「そう…ですか
でもさっきより寒くなってきたし…大丈夫かなぁ。
深雪「…ねぇ裏葉さん
裏「はい?
深雪たんは小さく呼びかけると僕に身を寄せてきた。
その白く美しい肌が僕に密着する。
………ん?
…え、ちょっと何この展開。
裏「み、深雪さん?
深雪「………
いや、あの胸があたってるんですけど。
裏「…寒いんですか?
深雪「……もー
深雪たんは軽く両手でポンと僕を叩いた。
裏「おわっとと…いきなりなんですか
深雪たんは少し不機嫌そうな顔で頬をプクーッと膨らませながら僕を見てきた。
深雪「………裏葉さんのばーか
裏「あ、あはは…
…OK、お疲れ僕。
何だかよくわからないけど、でもこれだけは言えるぜ…。
最近の女の子は発育良くてどうしようなんだぜ。
お兄ちゃんね、今とっても幸せ満点なんだ!
深雪「…なんだか今日はごめんなさい、色々とつき合わせちゃって…
裏「いやいや、本当に気にしなくていいですから
深雪「…また、会えるといいですねvそれじゃ…さよならです
裏「え、ちょ…
そう言うと深雪たんは可愛らしくミニスカートをなびかせながら小走りで駆けていった。
…そんなに走ると乳が揺れるぜお嬢さん。
僕は彼女が見えなくなるまでその場で立ちすくんでいた。
やがて深雪たんが見えなくなり、僕は一つ大きなため息をついた。
…はぁー、なんだかドッと疲れたなぁ。
あ……。
そういえば連絡先聞くの忘れてた…。
………………。
馬鹿だろ…常識的に考えて…。
自分の不甲斐無さに悔んでいるとふと後ろから話しかけられる。
女の子「あれー?お客さんこんなところで会うなんて奇遇ですねぇーv
…いや、僕の知り合いにはこんな軽快に話しかけてくる女性は居なかったはずだが。
そう思い振り向くとそこにはさっきのウェイトレスさんの姿があった。
勿論ウェイトレス姿なわけもなく、私服でのご対面だったが。
裏「あ、あれ?どうして…
僕が驚いた様に言う。
ウェイトレス「私、いつも12時で上がってるんですよー。それで今から家に帰るところでv
12時…もうそんな時間か。
深雪たん一人で大丈夫かな…とふと心配になる。
ウェイトレス「あれあれー?ひょっとしてさっきの彼女さんの事考えてますぅ?
そう言って小悪魔的に笑いながら僕の顔を覗き込んでくるウェイトレスさん。
とっさに一歩引く僕。
…なんなんだ一体。
裏「いや別に…
ウェイトレス「ありゃりゃ、そうなんですか?それは失礼しましたー
裏「いえいえ、構いませんが
何だかこの人はキャラがよく掴めない。
ウェイトレス「えっと、今帰りですか?
裏「あ、はい。そうです
ウェイトレス「家、どっち方面です?
裏「ええと…
僕は北の方角を指刺した。
ウェイトレス「へぇ、そうなんですかー。実は私もそっち方面なんですけど、良かったら一緒に帰りません?
と思わぬ提案をしてくるウェイトレスさん。
…まぁ可愛い女の子と一緒に帰れるなら願ってもない事ですが。
裏「はぁ、まぁ構いませんが
ウェイトレス「やったーv彼女さんの事、いっぱい聞かせてくださいねーv
裏「いや、だから彼女じゃないですって…
ウェイトレス「照れない照れないv
照れてないって…。
ウェイトレス「そういえばお名前、なんておっしゃるんですか?
唐突に名前を尋ねてくるウェイトレスさん。
裏「えっと、裏葉って言います
ウェイトレス「へぇー、良い名前ですねーv
裏「ええと、そちらは…?
ウェイトレス「私は堺、堺静名って言いますー
しずな…。
名前と違って全然静かじゃないなと突っ込みを入れたくなったがやめておく。
静名「裏葉様って呼んでもいいですか?
裏「え
静名「なんてねーv
裏「はぁ…
なんだか疲れる…じゃなかった、面白い人だなぁ。
静名「それじゃ裏葉君って呼ばせてもらいますねーv
裏「はぁ、わかりました
ついに伝説のその呼び名を解禁してしまうのか。
裏「…あの、こちらは何とお呼びすれば?
静名「んー、それじゃ静名ちゃんって呼んでくださいv
裏「え…でもそれは…
静名「呼んでくださいー
裏「いや…でも…
静名「彼女さんには下の名前で呼んであげてた癖に…
裏「…静名ちゃん
静名「はーいv
…やばい、何かテンションについていけない。
静名「それじゃ行こっか、裏葉君v
裏「あ、は、はい
何だかよくわからないノリだけど…まぁいいか。
って
裏「あの…
静名「なーに?
裏「…何で腕組んでくるんですか
静名「いいじゃん別に、寒いしーv
裏「…はぁ
貴様のぬくもりがあったけぇよバカヤロウ…。
―そして僕達は二人隣り合わせに帰路へと向かった。