深雪〜miyuki〜 第十六話〜自分に素直に〜
今にも雪が降りそうな寒さとは裏腹に、楽しげな町並み。
あちこちでライトアップされたツリーはとてもカラフルで、幻想的な光を放っていた。
クリスマスのその日。
時計の針は7時を差して、辺りはすっかり暗くなっていた。
そして…僕達は二人、立ちすくんでいた。
―貴方に…気にかけてほしかったから…
……。
目の前の少女…、深雪たんはそう答えた。
だけど…、
僕にはどう答えていいか分からなかった。
だから、何も言えなかった。
深雪「ごめんなさい…私……迷惑…ですよね、こんな…
裏「そんなこと…
そんなこと…そんなこと無い。
そんなこと無いのに。
僕はそれ以上何も言えなかった。
深雪「あの…
裏「…。
僕は…まるで言葉を失ってしまったかの様に、全く何も言い出すことが出来なかった。
深々と、重苦しい沈黙だけがその場を支配する。
深雪「……ごめんなさい、私…
深雪「………さようなら
その時。
その深く透き通った雫は地面にこぼれ落ちた。
彼女の雪の様に真っ白だった頬は、いつの間にか紅く変化していた。
"さようなら。"
その言葉を聴いた時。
なんだか…僕は本当に、もう会えなくなってしまいそうな気がした。
そうして…彼女は走り去ってしまった。
…畜生。
こんなの…。
こんな終わり方…望んでいなかったハズなのに…。
裏「おいおい…なんだよコレ
裏「僕…こんなの、最低じゃないか
深雪たんはきっとありったけの勇気を振り絞って僕に話してくれたのに。
僕は彼女の言葉に何を答えることもなく、ただ黙っていた。
それが…彼女の心を傷つけることくらい、分かっていたはずなのに。
それでも、僕は何も答えてあげられなかったんだ。
僕は…悔しさと悲しさの波に押し潰されそうになった。
静名「やれやれー…裏葉くんってばほんと駄目ねぇ
裏「え…?
静名「ふふw
裏「ど、どうしてここに…
静名「どうしても何も、裏葉くん達の事が心配で見にきたの
そんな時。
その人はいつもの様に突然僕の前に姿を現した。
いつも明るくて…どこかいじわるな女の子。
静名「裏葉くんってば、期待を裏切らないへたれっぷりだったねーw
そう言って静名さんは僕に笑顔を見せてくれた。
裏「静名さん、確か今日仕事って…
静名「そんなこと、今はどうでもいいでしょ。それよりほら、早く追いかけてあげなよ
裏「でも…
静名「好き…なんでしょ?深雪ちゃんのこと
裏「…僕は
そうだ。
僕は深雪たんの事が好きだった。
その気持ちは嘘じゃない。
だけど…
だけど…僕には彼女に釣り合える自信が無かった。
だから…僕は
裏「僕は…怖かったんです、僕が何を言っても彼女を傷つけてしまいそうだったから…
静名「…裏葉くん
裏「あ…
静名さんは、何も言わずにただ僕を優しく抱きしめてくれた。
抱き寄せられた体から伝わる温かなぬくもり。
それが今はなんだかすごく安心させてくれた。
静名「例えどんな結果になったとしても…何も言えないままお別れなんて、そんなのって駄目だよ
裏「それは…
静名「今は…さ、深雪ちゃんの傍に行ってあげなさい、そっから先は…君次第かな
裏「…
裏「……静名…さん
静名「大丈夫…裏葉くんなら、きっと大丈夫だから…
裏「静名さん……はい
静名「…ほらほら、分かったらさっさと追いかけろw
そうして、静名さんはパシンと僕の背中を叩いた。
裏「静名さん、有難う…有難うございます
静名「…おうw
僕は静名さんに軽くお辞儀をして、全速力で深雪たんが駆けていった方へ走り出した。
見つかるかどうかは分からない。
何を話せばいいかも分からないけど。
それでも…
それでも、今の僕にはそれしか出来ないから。
今はただ、自分自身に出来ることを精一杯やるために。
―
静名「…ふぅ
深里「静名さぁん…
静名「大丈夫だってw裏葉くんと深雪ちゃん、きっと上手くいくよw
深里「ねぇ…ほんとにこれで良かったの?静名さんだって、裏ちゃんのこと…
静名「…いーの、だって裏葉くんってば深雪ちゃんにベタ惚れなんだもんw私の付け入る隙なんて、最初からなかったんだ
深里「でも…
静名「…。
深里「静名さん…泣いてるの…?
静名「…あはは、あの駄目オトコ、女の子を二人も泣かすなんて、ほんと駄目駄目なんだから…