深雪〜miyuki〜 第十五話〜本当の気持ち〜
深雪「すごい人、ですね…
裏葉「…そうですねー
寒いながらも太陽の日差しが眩しい。
カジュアルなストールに、タータンチェックのミニスカート。
黒いニーソックスから覗かせる白く美しい肌。
と、いうかまぁ生足。
俗に言う生足である。
所謂一つの絶対領域ってやつですか。
生足と絶対領域の悩ましさについて語るのは変人といえばこの人、ご存知裏葉さんであります。
…まぁそんなわけで、落ち着いていながらもいつもよりおめかしした深雪たんは、その可愛らしさをより一層引き立てていた。
―その日。
僕達は二人、映画館の前に立っていた。
クリスマスということもあってか、多くのカップルや家族で賑わっている。
そんなカップルの中に混じって、何故か僕ら、二人。
何故か…そう、昨日のことだ。
"そーだ、裏葉くんにこれあげるよv"
"…?なんですかこれ?"
"もぉー見ればわかるでしょー、映画のチケットだよ"
"いや、それは分かりますが…どうして僕に?"
"明日、クリスマスでしょ?深雪ちゃんと一緒に行っておいでよv"
"もしかしたらむふふーwな展開になるかもよー?w"
…と、僕はチケットを渡されたのだ。
"WHITE ALBUM"
ホワイトアルバム。
映画のポスターにはそう表されていた。
女の子と二人っきりで恋愛映画、これはまるでアレですね。
デートってやつみたいですね。
深雪「私…映画なんて久しぶりです
裏「僕も…子供の頃に観に来て以来ですね
映画…ね。
いや、別に映画嫌いなわけじゃないけどさ。
エヴァの映画なら観てみたいもんだが、隣に女の子が居る手前堂々とアスカたん萌えとか叫ぶわけにもいかんし。
いや、女の子が居なくても叫ぶわけにはいかんかもしれないけど。
場内ではお静かに!だね!
裏「とりあえず入りましょっか
深雪「えと…、そうですね
寒いし、ずっと映画館の前で立ち尽くしていても仕方が無いので、僕達は映画館の中へと入ることにした。
映画はどうも今日公開らしく、映画館の中も人、人、人で混みあっていた。
もしかしてそれなりに話題作だったりするのかしら。
僕はテレビとか見ないし、全然さっぱりだったわけだが…。
裏「それにしても…クリスマスだっていうのに付き合ってもらっちゃってほんとに良かったんですか?
深雪「あ、いえ…私は全然…
裏「でも、僕なんかと一緒に居るより、彼氏さんと居た方が…
深雪「…それは
僕がそう言うと、深雪たんは口ごもってしまった。
…しまった、なんか不味いこと言っちゃったかな。
裏「あ、えっと…とりあえずいきましょっか
深雪「は、はい…
そう言って僕達は会場の中へと足を運んだ。
スクリーンに映し出されたのは、想像通り恋愛モノの映画。
雪の降り積もる町。
偶然再会を果たした幼馴染の二人が恋に落ちていく物語。
なんか結構ベタなストーリーって気もするけど、最近は皆こういうのが好きなんだろうか。
周りは静まり返ってスクリーンに釘付けになっているようだった。
僕はというと一人ポップコーンの美味しさに感動してるわけだが。
なんで映画館に売ってるポップコーンってこんな美味しいんでしょ。
塩加減とかがこう…なんとも素晴らしい。
深雪「ねぇ…裏葉さん
裏「え?あ、はいなんでしょう!
唐突に声をかけられててんぱる僕。
思わずポップコーン噴出しそうになってしまったじゃないか、汚い。
深雪「素敵…ですね…
裏「え、あ…そ、そうですね
周りのお客人が静まり返る中、僕の隣にも映し出された物語に魅了されている少女が一人。
スクリーンに映し出された二人は、雪が降り積もる中で、深く抱き合っていた。
おk、ポップコーンを食すのに夢中で全然見てなかったぜ。
なんか僕一人だけ場違いな気がしてこないでもない。
―映画も見終え、映画館を後にする僕達。
裏「ふぅ…ちょっとそこのベンチで休憩しますか
深雪「えへへ…、私も少し疲れちゃいました
…まずいな、何か食べることに集中しすぎてほとんど観てなかった気がする。
深雪「あの…映画、すごく面白かったですねv
裏「あ、は、はい、そうですね!楽しかったですよね!
深雪「…?裏葉さん?
…これはまずい。
映画観にいこうと誘っておいて、誘った本人が見てないとか駄目すぎるだろ常考…。
深雪「むぅ…ひょっとして裏葉さん、観てなかったんですか?
ごー、びよん。
ごーびよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん。
ナイス洞察力。
お兄ちゃんは感激してしまったよ。
裏「えっと…あのー…実はその、あまりに感極まっちゃって内容とかあんまり覚えてなくて…えーと
食べるのに集中してて観てなかったぜ!などと高らかに叫ぶわけにもいかないので、そこはかとなく言い訳。
深雪「…うふふv
裏「み、深雪さん?
深雪「…ごめんなさいwなんだか必死で言い訳する裏葉さん、子供みたいで可愛くてv
裏「あ、あはは…
深雪たんは罵倒するでもなく、そう言ってただ微笑んでいた。
その無垢な笑顔は、ただひたすらに愛らしかった。
というか言い訳についてはモロバレなんですね!
なんか
「君の方がよっぽど子供っぽいと思うけど、その童顔に釣り合わない豊かな胸にはそそられるものがあるぜ」
とかなんとか言ってやりたくなったが、とりあえずそれはおいておくとしよう。
むしろ置いておいてくれ。
深雪「…あんな素敵な恋愛、私もしてみたいな
裏「え?でも深雪さん、彼氏居るんじゃ
深雪「……
深雪たんの彼氏。
温泉で話を聞いて以来、深雪たんは何も言ってこない。
だから僕も触れないでいる。
けど…やっぱり気になる。
裏「今日だって、映画を観に来るなら僕なんかとじゃなく、彼氏さんと…
深雪「…裏葉さん
裏「は、はい
深雪「ごめん…なさい
裏「え…
深雪「その話…本当はウソ…なんです
……なんとなく。
なんとなくそんな気はしていたけど。
裏「……でも、どうしてそんなウソなんて
深雪「………
深雪「……貴方に…気にかけてほしかったから…
裏「え…
それって…、どういう…。
そう思った時、僕はふと気づいた。
彼女の頬をつたって、静かに流れ落ちる雫。
それは全てを魅了してしまうかの様に、とてもとても深く透き通っていた。
目の前の少女…深雪たんはその澄んだ瞳から大粒の涙を流していたのだ。