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深雪〜miyuki〜 第十四話〜戸惑い〜


……。

どれくらい時間が経っただろう。

―どくん

いや、きっと時間なんて全然経っていないんだろうけど。

―どくん

…なんだろう。
初めてだったから?それとも突然だったから?

それとも…

―どくん

それとも静名さん…だったから?

―どくん、どくん、どくん…

心臓がおかしくなってしまうくらいに絶え間なく続く胸の鼓動。

どくんどくんと、その鼓動は徐々に速度を増していく。

僕の目の前には普段の彼女が嘘の様に、らしくもなく静まり返った静名さんの姿が有った。
気のせいか…、俯いて隠れた頬が染まっているように感じた。

…はて、これは一体どういうことでしょうか!

裏「…あ…あの……

その沈黙に耐え切れなくなった僕は重苦しい口を開いた。

静名「…裏葉くんってさ…ひょっとしてプレッシャーとかそういうの、苦手なタイプだったり?
裏「え…
静名「だって…こういう雰囲気とか、苦手そうだから…w

そう言って静名さんは苦笑いする。

…。
……まぁ確かにあんまり得意じゃないけど…。

裏「それは…静名さんがいきなり…その…キスなんてするから…
静名「……だったかな?
裏「え?
静名「嫌…だったかな?私とじゃ…

慌てふためく僕をよそに、静名さんは独り言の様にそう呟いた。
今にもかき消えてしまいそうなくらい小さな声で。

なんていうか…静名さんらしくもない。

裏「その…別に嫌とかじゃなくて…
静名「…。
裏「えっと…いきなりだったからとまどったっていうか…
静名「……。
裏「…えーっと…

静名さんの真意も、高鳴る胸の鼓動の意味もわからないけれど。

それでも今はただ目の前に居る人のためにひたすら言葉を探した。

裏「その…嫌でも静名さんのこと嫌いなわけでもないですけど、えっと…
静名「…えへへwもーう、裏葉くんったらそんなに慌てちゃってv
裏「え…
静名「あれくらいで慌てふためいてるようじゃ、まだまだ子供だねw
裏「そ、それは…仕方ないでしょ…
静名「ふふふーw
裏「…。

時間が止まってしまいそうな、そんな重苦しい空気を断ち切るかのように。

まるでさっきまでとは別人の様に、静名さんはぷにぷにと僕のほっぺをつついてくる。
それでも少し笑顔が引きつっている様にも見えたけど。

…。
……なんだかもう僕にはよくわからない。

静名「ほらほら、もっと元気出して!そんなんじゃ深雪ちゃんに嫌われちゃうよーv
裏「べ、別に深雪さんは関係ないじゃないですか…
静名「裏葉くんはさー
裏「…はい
静名「裏葉くんは…深雪ちゃんのこと好きでしょ?

…はて。

さっきから全く話の展開が読めないわけだが、静名さんは何か唐突にそんなことを聞いてくる。

あれか。
女の子は恋バナが好きだっていうけどそれですか。

戸惑う僕をよそに、静名さんは上目遣いに少し照れながら僕を見つめてくる。
僕は不覚にもそんな彼女のことを可愛いと思ってしまった。

裏「好きって…
静名「もちろん、女の子として…さ
裏「それは…
静名「そりゃあ…まだ知り合って間もないかもしれないけど…それでも、好き…なんでしょ?
裏「…それは……

…深雪たんはとっても魅力的な女の子だと思う。

僕にはとても彼女と釣り合えるとは思えないし、それに深雪たんには彼氏も居る。

それでも…僕は…多分。

裏「……好き…かな…

…そう。
まだはっきりとは分からないけど。

でも…僕はいつの間にか深雪たんに惹かれていっていたんだと思う。

見た目だけじゃない。
彼女の純真な心、愛らしい声、そして天使の様に無垢な笑顔に僕は魅了されていったんだろう。

静名「…。
静名「……そっか

しばしの沈黙。

僕がそう告白すると、静名さんは一言そう、笑顔で返してくれた。

静名「…っへへwまったくもう、この子ったらこの寒い季節におアツイんだからねぇーw
裏「…。

アホみたく顔を真っ赤にしている僕。
そして笑顔のまま茶化す様に僕を見つめてくる静名さん。

普段の僕ならきっと思いっきりほっぺをつねってやりたいとか思うに違いない。

…。

でも…
僕には分からなくなっていた。

彼女…静名さんは本当は何を考えて、何を想っているのだろう。
どんな想いで僕の前に立っているのだろう。

僕は…どうすればいいんだろう。

静名「…ねぇ、裏葉くん
裏「はい?
静名「明日…何の日か覚えてる?

明日…。



静名「明日…クリスマスだよw
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