深雪「裏葉…さん?

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早瀬深雪の失踪 II


最初から出会わなければ良かった


―。

あれから一週間。

私の日常は変わらない。
ただそこから彼だけが消えてしまっただけ。

ただ、それだけ。

それは、きっとそんなとても単純な事。


…そのはずだった。
なのに、私はいつまでも気が晴れなかった。

いつまでも彼の顔が頭から離れなかった。

…彼と離れたくない。

また会いたい。
…会いたい。
…会いたい。

会って彼と話がしたい。

また彼と一緒にたくさん笑い合いたい。


そう考えていると私は気持ちが抑えきれなる。

私は居てもたっても居られなくなって、玄関へと向かった。

深里「お姉ちゃん?出掛けるの〜?
深雪「うん…ちょっと

ブーツを履き、外へと出掛けようとしていると、妹の深里が部屋から顔を出してきた。

深里「ね、お姉ちゃん最近裏ちゃんと連絡取ってる〜?
深雪「え…?
深里「お姉ちゃんがちゃんと構ってあげないと、裏ちゃん寂しくて浮気しちゃうかもよ〜w
深雪「……。

…そっか。

深里「あ!お姉ちゃんってば…

バタン。

私は深里の問いに答えずに玄関の扉を閉めた。



――。

ただひたすらに。

私は歩いていた。

淡い蛍光灯の光が照らす夜道を。
ただ一人歩いていた。

かすかな草木の揺れる音だけが聴こえる静かな夜。
顔を上げると見える幾多の星達。

ただ…彼に会いたいと願う、この想いを消し去りたくて。


まだ冬の冷たさが残る風が私の身体を突き刺す。

深雪「寒い…

私は思わず、そう声を漏らした。


その時。

「あれ?

―ドクン。

深雪「あ……
「…深雪さん?

その人は私の前へと姿を現した。

それは偶然か、それとも神様の悪戯か。

私達は出会ってしまった。

…久々に聴いた彼の声はどこか懐かしく想えて。

…それが今は悲しくて。


私は胸が苦しくなる。

まるで心臓を誰かに掴まれている様な。
そんな感覚。

私の一番聴きたかった声。
私の一番愛しい人の声。

今は…その声は…。


― ドクン。

ドクン、ドクン、ドクン。

高鳴る胸の鼓動。

「偶然ですねー!こんなところで会うなんて

彼はそう言って私に笑顔を見せてくれた。

だけど…私は分からなかった。

その笑顔は…その心は、本当に私を見てくれているの?
貴方は私を愛してくれているの?


「あ、えっと…久しぶりですね!元気でした?
深雪「……。

私は何を話していいか分からなかった。

…。
……違う。

本当は分かっている。

このモヤモヤした気持ち。


知りたい。

本当の事を。

あの日の事を。



分かってる。

聞けばいいの。

彼に直接。

あの日の…真実を。

彼に聞けば…それで。

あの日のコト。
あの噴水場でのコト。

あの…二人のキスの事を。

それを彼に答えを。

それだけでよかった。
本当にそれだけでよかったのに。

私は躊躇してしまっていた。

「深雪…さん?

彼が心配そうに私の顔を覗き込む。
近づく私と彼の距離。

私はそんな彼の行動にどきどきしてしまった。

深雪「な、なんでもないですから…

私は慌てて彼から離れる。


…そっか。

私、きっとまだ彼の事が好きなんだ。

だから彼を傷つけたくないんだ。

彼を問い正して、彼を傷つかせるのが嫌なの。




―…本当に?

本当にそう?

私は自分自身に問い正した。


…違う。

本当は…そうじゃない。


"本当のコト"を知って、私自身が傷つくのが嫌なだけ。



裏「深雪さん…泣いてるんですか?
深雪「あ……

私…。

…気がつかなかった。

私はまた…涙を流していた。


あはは…駄目だな、私。

子供の頃からずっと…そう。
いつまでたっても泣き虫で。

こんなことだから嫌われちゃうのかな…。


……裏葉さん。





深雪「…ごめん…なさい、失礼します

私はただ一言、そう言って足早に彼の前から姿を消した。


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